スペインのクリスマスに欠かせない伝統菓子「トゥロン(Turrón)」。
アーモンドや蜂蜜をふんだんに使ったヌガー菓子で、500年以上の歴史を持ち、今も家庭や街角の菓子店で愛され続けています。
硬いタイプと柔らかいタイプがあり、香ばしいナッツの風味と濃厚な甘さが特徴。
近年ではチョコレートやフルーツを加えたアレンジも登場し、世界中で人気を集めています。
本記事では、トゥロンの基本情報から味わい、家庭で作れるレシピ、さらに豆知識まで徹底解説します。
トゥロンとは?基本情報と歴史

スペインを代表する伝統菓子トゥロンは、アーモンド、蜂蜜、砂糖、卵白を主原料とするヌガー菓子です。
特にアリカンテ地方のヒホナが発祥とされ、15世紀にはすでに王室にも献上されていました。
現在ではスペイン全土やラテンアメリカでも広く親しまれています。
トゥロンの名前の由来と意味
「トゥロン(Turrón)」という名前は、ラテン語の「torrere(焼く)」に由来するといわれています。これはアーモンドを焙煎して使う製法に関係しており、香ばしさを象徴する言葉でもあります。
トゥロンはヌガーの一種ですが、スペイン独自の製法と材料比率が特徴です。
アーモンドの含有量が高く、硬い「トゥロン・ドゥロ」と柔らかい「トゥロン・ブランド」に大別されます。

※ヌガー菓子とは、砂糖や蜂蜜を煮詰め、ナッツやドライフルーツを混ぜて固めたソフトキャンディーの一種です。
スペイン発祥の伝統菓子としての背景
8世紀、イスラム教徒(ムーア人)がスペイン南部を支配していた時代、アーモンドや蜂蜜を使った菓子文化が地中海沿岸にもたらされました。
その甘美な伝統はアリカンテ地方で独自に発展し、やがて今日の「トゥロン」と呼ばれるスペインを代表する菓子の原型となったと伝えられています。
特にヒホナとアリカンテのトゥロンは原産地呼称(IGP)に認定され、伝統と品質を守り続けています。

ナッツの香ばしさとシンプルさが歴史を感じさせるお菓子です。
トゥロンの味と食感の特徴

トゥロンは甘さと香ばしさが絶妙に調和した菓子で、タイプによって食感が大きく異なります。
アーモンドの風味が口いっぱいに広がり、シンプルながら奥深い味わいが魅力です。
甘さと香ばしさのバランス
蜂蜜の自然な甘さとローストアーモンドの香ばしさが調和し、しつこさのない上品な甘みを楽しめます。
アーモンドの含有量が50〜60%以上と高く、噛むほどにナッツの旨みが広がります。
柔らかいタイプと固いタイプの違い
- トゥロン・ドゥロ(硬いタイプ):アーモンドを丸ごと使い、カリッとした食感。
- トゥロン・ブランド(柔らかいタイプ):アーモンドをペースト状にし、しっとりなめらか。

噛むたびにアーモンドの香りが広がる幸せを味わってみてくださいね。
家庭で作れるトゥロンのレシピ
スペイン旅行気分を味わいたいなら、自宅でトゥロンを手作りしてみるのもおすすめです。
材料はシンプルですが、火加減や混ぜ方にコツがあり、完成したときの達成感は格別。
ここでは初心者でも挑戦しやすいレシピをご紹介します。
必要な材料と分量(約20cm 1本分)
- アーモンド(皮なし・ロースト)…250g
- 蜂蜜…150g
- 砂糖…100g
- 卵白…1個分
- ウエハース(型の底用・なくても可)…適量
作り方の手順

- アーモンドを軽くローストして香りを引き出す。
- 鍋に蜂蜜を入れ、弱火でゆっくり加熱。砂糖を加えて溶かす。
- 卵白を軽く泡立て、鍋に少しずつ加えながら混ぜる。
- アーモンドを加え、全体を均一に混ぜる。
- 型にウエハースを敷き、流し入れて平らにならす。
- 冷めて固まったら切り分けて完成。
失敗しないための注意点
- 火加減は常に弱火で、焦げを防ぐ。
- 卵白を入れるときは一気に加えず、少しずつ。
- 型に流し込んだら素早く平らにする。

冷蔵庫で一晩寝かせると味がなじみ、切りやすくなります。
トゥロンの豆知識・トリビア

トゥロンはただの甘いお菓子ではなく、スペインの文化や習慣と深く結びついています。
知っておくと会話のネタにもなる豆知識をご紹介します。
豆知識
クリスマスとトゥロンの関係
スペインではクリスマスに欠かせない菓子で、家庭や職場でシェアされる定番スイーツです。
スペイン各地でのバリエーション
ヒホナやアリカンテ以外にも、フルーツ入りやチョコレート風味など地域ごとの特色があります。
お土産やギフトとしての人気
保存性が高く、パッケージも華やかなので旅行者のお土産としても人気です。
世界各地のトゥロン

イタリアの「トローネ(Torrone)」
イタリアでは「トローネ」と呼ばれ、特にクレモナやベネヴェントが名産地として知られています。スペインのトゥロンに比べてナッツの含有量がやや少なく、柑橘の香りやバニラ風味を加えるなど、バリエーションが豊富。ソフトタイプ(morbido)とハードタイプ(duro)があり、クリスマス菓子として親しまれています。
ラテンアメリカ・ペルーのトゥロン
ペルーでは「トゥロン・デ・ドーニャ・ペパ」と呼ばれる独自のスタイルが有名です。アニスで香りづけした柔らかい生地を層状に重ね、カラフルな砂糖菓子をトッピングするのが特徴。10月の「セニョール・デ・ロス・ミラグロス(奇跡の主祭)」に欠かせない菓子として、宗教行事と深く結びついています。
フィリピンの「トゥロン(Turon)」
フィリピンのトゥロンは、スペイン由来のヌガー菓子とは全く異なる進化を遂げています。こちらはバナナやジャックフルーツを春巻きの皮で包み、油で揚げたスイーツ。外はカリッと、中はとろりと甘い果実が広がり、ストリートフードとして大人気です。日本でもバナナと春巻きの皮で手軽に再現できます。
フランスやポルトガルのバリエーション
フランス南部ルシヨン地方やポルトガルでも、トゥロンに似たヌガー菓子が作られています。フランスでは「ヌガー・ド・モンテリマール」が有名で、蜂蜜とアーモンドを使った白ヌガーが定番。ポルトガルでは「トロン(Torrão)」と呼ばれ、地域ごとに異なる甘味文化が息づいています。

こういう伝統菓子をお土産にすれば会話も弾みそうですね。
まとめ:トゥロンの魅力を再発見

トゥロンは、スペインの人々にとって単なる甘いお菓子ではなく、家族や友人と過ごす時間を彩る大切な存在です。
アーモンドと蜂蜜というシンプルな素材から生まれる豊かな味わいは、500年以上の歴史を経てもなお愛され続けています。
硬いタイプは噛むほどに香ばしさが広がり、柔らかいタイプは口どけの良さで心を癒してくれます。さらに、チョコレートやフルーツを加えた現代的なアレンジも登場し、伝統と革新が共存する菓子として進化を続けています。
家庭で作れば、スペインのクリスマス気分を味わえるだけでなく、手作りならではの温かみも感じられるでしょう。
旅行のお土産としても人気が高く、贈り物にすれば会話のきっかけにもなります。
歴史や文化を知ることで、ひと口の甘さに込められた物語がより深く感じられるはずです。
トゥロンは、味覚だけでなく心まで満たしてくれる、まさにスペインを象徴する伝統菓子といえるでしょう。